アルギニンの筋トレへの科学的効果。持久力向上・疲労軽減など

アミノ酸のアルギニンは、トレーニング時に飲みたいサプリメントの1種。一酸化窒素を排出したり、オルニチン回路を活性化させたりなどの働きをして、以下のような作用が実験で報告されています。

  • 血管拡張で持久力向上
  • 疲労軽減
  • 筋肉衛星細胞活性化
  • 脂肪燃焼を促進
  • 成長ホルモン分泌

この記事では、アルギニンの研究結果を元に作用を解説して、おすすめの飲み方を紹介します。ぜひ最後まで読んでアルギニンの導入を検討してみてください。

アルギニンとは


アルギニンはアミノ酸の一種です。アミノ酸は体内で合成できない9種類の必須アミノ酸と、体内で合成できる11種類の非必須アミノ酸に分かれます。アルギニンは体内で合成できるため、非必須アミノ酸です。

ですが、子どもは体内で合成できないため、子どもにとっては必須アミノ酸とされています。また、大人も必要量を十分に合成出来ないため、食事での摂取が必要です。さらにアルギニンの作用を得たい人はサプリメントから摂取しましょう。

アルギニンを摂取することで血中アルギニンレベルを高め、以下の効果を得られます。

  • 一酸化窒素を産生する
  • オルニチン回路を活性化する

一酸化窒素を産生する

アルギニンは体内で一酸化窒素を産生します。一酸化窒素には血管を拡張する働きがあり、持久力向上や筋肉衛星細胞活性化などの作用が報告されているのです。詳細は次の章で解説します。

アルギニンコラム画像02

オルニチン回路を活性化する

アルギニンはオルニチン回路を活性化させて、アンモニアの処理に貢献してくれます。プロテインを大量に摂取してトレーニングに励む人は、アンモニアの排出量が増えて、アンモニア臭くなりがちです。

それはプロテインに含まれるグルタミンがアンモニアとグルタミン酸に、グルタミン酸がアンモニアとαケトグルタル酸に変化するため。グルタミンからアンモニアが大量に排出されるため、臭くなってしまうのです。

そのアンモニアを処理するには「オルニチン回路」を活性化する必要があります。オルニチン回路はアンモニアを、カルバモイルリン酸→シトルリン→アルギノコハク酸→アルギニン→尿素とオルニチンの順で変化させます。

アルギニンはオルニチン回路を活性化させて、処理できるアンモニアの量を増やしてくれるのです。

アルギニンの作用


続いて、アルギニンの作用について解説します。血管拡張による持久力の向上や疲労の軽減など、様々な作用があると考えられています。

  • 血管拡張で持久力向上
  • 疲労軽減
  • 筋肉衛星細胞活性化
  • 脂肪燃焼を促進
  • 成長ホルモン分泌

血管拡張で持久力向上

先ほど解説したようにアルギニンには、一酸化窒素を産生する働きがあります。一酸化窒素には血管を拡張する作用があり、酸素や栄養素の運搬をスムーズにしてくれるのです。その結果、持久力を向上する作用があると考えられています。

ハンドボール選手を対象にした実験では、アルギニンとBCAA(アミノ酸)を摂取したグループの方がそうでないグループより、2日間に渡って断続的に行われたスプリントのタイムが優れていました。*1 

アルギニンコラム画像03

疲労軽減

また、オルニチン回路の活性化により、疲労を軽減させる作用もあると考えられています。テコンドー選手を対象にした実験では、アルギニン・シトルリン(アミノ酸)・BCAAの摂取により、運動による中枢疲労が減ったと結論付けられました。*2

筋肉衛星細胞活性化

アルギニンの摂取によって一酸化窒素の産生が増えると先ほど解説しました。この一酸化窒素は、将来的に筋肉に変わる「筋肉衛星細胞」を活性化する作用があります。

肥満をラットを対象にした実験では、アルギニンを摂取させたグループの方が筋肉量を増加させました。*3

また、豚のエサにアルギニンを混ぜた実験では、骨格筋量が5.5%増えました。*4

脂肪燃焼を促進

アルギニンには脂肪細胞の増加を抑えて、脂肪減少を助けてくれる作用があります。

先ほど紹介した、肥満ラットを対象にした実験では、アルギニンを摂取させたグループの方が脂肪細胞の増加を抑えられました。*3

こちらも先ほど紹介した、豚のエサにアルギニンを混ぜた実験では、脂肪量が11%減りました。*4

成長ホルモン分泌

アルギニンは、成長ホルモンの分泌を促すと考えられています。

コペンハーゲンで7歳から13歳の子どもを対象にした実験では、アルギニン摂取量の多い子どもの方が身長の伸びが大きかったと報告されました。これは成長ホルモン分泌によるものと考えられます。*5

アルギニンの摂取方法


最後に、アルギニンの摂取方法について解説します。シトルリンと一緒に摂取できるサプリメントがおすすめです。

  • シトルリンとは
  • 摂取量

シトルリンとは

シトルリンはアルギニンと同じくアミノ酸の一種です。シトルリンは体内でアルギニンに変わります。なので作用はアルギニンとほぼ同じなのですが、アルギニンだけで飲むとアルカリ性が強いため、味がよくありません。胸焼けもしやすいです。

そこでアルギニンとシトルリンの含まれたサプリメントがおすすめです。

摂取量

1回650~750mgのアルギニン・シトルリンを1日2回摂取しましょう。どちらもアミノ酸なので、消化吸収が早いです。30分でアルギニンレベルが最大化します。

一方で、一酸化窒素の作用によって血流が最大になるまで90分かかります。トレーニングの60分前にアルギニン・シトルリンを摂取して、血流が高まった状態でトレーニングに励めば、持久力向上作用がより期待できます。

アルギニンコラム画像04

まとめ


アルギニンは体内で合成できる非必須アミノ酸ですが、必要量を十分に合成できないため、食事での摂取が必要です。

アルギニンは血中アミノ酸レベルを高めることで、一酸化窒素産生やオルニチン回路を活性化する働きがあります。

これにより、持久力向上・疲労軽減・筋肉衛星細胞活性化・脂肪燃焼促進・成長ホルモン分泌などの作用が実験により報告されているのです。

これらの効果をより得たい人は、サプリメントを活用しましょう。アルギニンだけだとアルカリ性が強くて味が悪いため、シトルリンも含まれるサプリメントがおすすめです。

シトルリンは体内でアルギニンに変わるため、同じ作用が期待できます。

1回650~750mgのアルギニン・シトルリンを1日2回摂取しましょう。血流が最大になるまで90分かかるため、トレーニングの60分前にアルギニン・シトルリンを摂取するとより持久力向上作用が期待できます。

ぜひ、アルギニンの導入を検討してみてください。


<参照文献一覧>

・サプリメントA to C ー 山本義徳業績集

*1 Branched-chain amino acids and arginine improve performance in two consecutive days of simulated handball games in male and female athletes: a randomized trial ー PLoS One. 2015 Mar 24;10(3):e0121866. doi: 10.1371/journal.pone.0121866. eCollection 2015. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25803783/

*2  Branched-chain amino acids, arginine, citrulline alleviate central fatigue after 3 simulated matches in taekwondo athletes: a randomized controlled trial ー J Int Soc Sports Nutr. 2016 Jul 13;13:28. doi: 10.1186/s12970-016-0140-0. eCollection 2016. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27418883/

*3 Dietary L-arginine supplementation reduces white fat gain and enhances skeletal muscle and brown fat masses in diet-induced obese rats ー J Nutr. 2009 Feb;139(2):230-7. doi: 10.3945/jn.108.096362. Epub 2008 Dec 23. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19106310

*4 Dietary L-arginine supplementation increases muscle gain and reduces body fat mass in growing-finishing pigs ー Amino Acids. 2009 May;37(1):169-75. doi:10.1007/s00726-008-0148-0. Epub 2008 Aug 6. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18683021/

*5 Dietary arginine and linear growth: the Copenhagen School Child Intervention Study ー Br J Nutr. 2013 Mar 28;109(6):1031-9. doi: 10.1017/S0007114512002942. Epub 2012 Oct 10. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23046689/