マルトデキストリンの筋トレへの科学的効果。筋断面積の増大、筋タンパク質の分解抑制、持久力の向上

糖質のサプリメントで、筋トレ中によく使われる「マルトデキストリン」。筋トレ中に糖質を摂取することで筋断面積の増大、筋タンパク質の分解抑制、持久力向上などの作用が報告されています。

この記事では、糖質が筋トレに重要な理由から、マルトデキストリンの作用、おすすめの飲み方まで解説しました。

マルトデキストリンとは


マルトデキストリンとは、とうもろこしから作られる糖質です。とうもろこしのでんぷんを加水分解して、作られたグルコース(糖質)のことをいいます。

ダイエットでは嫌われがちな糖質ですが、筋肉にとっては重要なエネルギー源です。

筋肉へのエネルギー供給

筋肉が収縮するためには、ATP(アデノシン三リン酸)が必要です。ATPからリン酸が1個離れるときに、エネルギーが放出されて筋収縮が起こります。このときATPは、ADP(アデノシン二リン酸)に変化します。

しかし、ATPは筋肉内にわずかしか貯蔵されていないため、すぐに枯渇してしまうのです。

そのため運動を続けるには、ATPを体内で合成しなければなりません。ATPを合成する方法は主に以下の3つです。

  1. ATP-CP系
  2. 解糖系
  3. 有酸素系

ATP-CP系

先ほど、ATPからリン酸が1個離れてエネルギーが生まれるとき、ATPはADPに変化すると解説しました。このADPは、筋肉内のクレアチンとリン酸が結合したクレアチンリン酸と結びつくことで、ATPに再合成されます。これがATP-CP系です。

しかし筋肉内のクレアチンとリン酸の量には限りがあるため、ATP-CP系は8秒ほどしか持続しません。その代わり、素早くATPを供給できるため瞬発系の運動で主に働きます。

解糖系

解糖系では主に糖質を使ってATPを合成します。持続時間は30~60秒ほどです。中距離走のように数十秒間、最大限の筋力が求められる運動で主に働きます。

有酸素系

有酸素系は、主に糖質と脂質を使ってATPを合成します。瞬間的なパワー発揮には向かないものの、数十分間から数時間の間、持続的にATPを供給できます。短時間の運動の場合は糖質を使う割合が高く、長時間になればなるほど脂質を使う割合が高くなります。

マルトデキストリンコラム画像02

筋トレでは主に解糖系が使われ、糖質が必要

筋肥大のための筋トレは、1セットあたり8~12回行うことが多いです。1回の挙上に4~5秒ほどかかるとすると、1セットあたり32秒~60秒です。つまり筋トレでは解糖系が主に働きます。

解糖系が主に働くということは、糖質が主なエネルギー源です。糖質が十分にあれば、エネルギーが豊富になるので、筋肉を十分に追い込むことができます。一方で糖質が不足するとエネルギーが不十分となり、筋肉を追い込みきれません。

マルトデキストリンは筋トレ中の糖質摂取に適している

このように、筋トレでは糖質の摂取が重要ですが、吸収速度が遅いものだと、胃もたれが起きて筋トレに集中できなくなってしまいます。

その点、マルトデキストリンは水に溶けやすくて吸収効率に優れるため、ワークアウトドリンクに適しているのです。

マルトデキストリンを飲むと体内でグリコーゲンとなり、解糖系に使われたり筋肉に蓄えられたりします。

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マルトデキストリンの作用


マルトデキストリンの作用は、糖質が補給されることでもたらされます。主に以下の3つの作用が報告されています。

  • 筋断面積の増大
  • 筋タンパク質の分解を抑制
  • 持久力の向上

筋断面積の増大

糖質を摂取することで、筋肉内のグリコーゲン「筋グリコーゲン」が増加します。この筋グリコーゲンは水分と結びついて筋肉内に補充されるため、グリコーゲンと水分によって筋断面積が増加するのです。*1 

ボディビルダーはこの作用を狙って大会直前に水分と炭水化物を大量に摂取します。

筋タンパク質の分解を抑制

筋トレ直後から筋肉を構成する筋タンパク質の合成と分解が活発化します。筋肉を増やすためには、筋タンパク質の合成を促進して分解を抑制することが重要です。

筋トレ時に糖質を摂取することで、筋タンパク質の分解が抑制されたと報告されています。*2

持久力の向上

先ほど解説したように、解糖系では糖質が主なエネルギー源となり、有酸素系でもエネルギー源となります。そのため、数十秒のパワーが必要な運動から数十分の持久系の運動まで、糖質は重要なエネルギー源なのです。

そのため糖質を摂取することで、さまざまな運動の持久力が向上すると考えられます。実際にサイクリストの持久力パフォーマンスを向上させたと報告されています。*3

マルトデキストリンの飲み方


マルトデキストリンは、体重の6%を1リットルの水に溶かして飲みましょう。体重70kgならマルトデキストリンは40gです。

筋トレ開始時から終了までに飲み切りましょう。筋トレで失われるグリコーゲンを素早く補給できます。

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まとめ


マルトデキストリンとは、とうもろこしから作られる糖質です。とうもろこしのでんぷんを加水分解して、作られたグルコース(糖質)のことをいいます。

糖質は「解糖系」で主に使われ、筋トレのように数十秒間、最大限の筋力が求められる運動で主に働きます。糖質の中でも、マルトデキストリンは水に溶けやすくて吸収効率に優れるため、ワークアウトドリンクに最適です。

筋トレ中に糖質を供給することで筋断面積の増大、筋タンパク質の分解抑制、持久力向上などの作用が報告されています。

体重の6%を1リットルの水に溶かして飲みましょう。体重70kgならマルトデキストリンは40gです。筋トレ開始時から終了までに飲み切ってください。

マルトデキストリンは、筋トレで筋肉を大きくしたい方や持久力を高めたい方におすすめです。

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<参照文献一覧>

炭水化物のすべて ー 山本義徳業績集

*1 Effect of glycogen loading on skeletal muscle cross-sectional area and T2 relaxation time ー Acta Physiol Scand (Report missing IFs). 2001 Dec;173(4):385-90. doi: 10.1046/j.1365-201X.2001.00913.x.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11903130/

*2 Effect of glucose supplement timing on protein metabolism after resistance training ー J Appl Physiol (1985) (IF: 3.53; Q2). 1997 Jun;82(6):1882-8. doi: 10.1152/jappl.1997.82.6.1882.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9173954/

*3 Carbohydrate ingestion improves endurance performance during a 1 h simulated cycling time trial ー J Sports Sci (IF: 3.34; Q2). 1997 Apr;15(2):223-30. doi: 10.1080/026404197367506.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9258853/