HMBが筋肉の合成を促進し、分解を抑える科学的根拠。

筋トレの効果を高めるサプリメントとして、トレーニーにおすすめなのがHMB。HMBは筋肉の合成を促進して分解を抑える効果があるため、筋肥大させたい人に特におすすめです。

この記事ではHMBとはどんな成分で、どんな効果があるのか、その科学的な根拠とおすすめの飲み方を解説します。また、HMBは「クレアチン」と合わせて飲むと、より筋肥大の効果が高まります。

この記事の内容をしっかりと理解すると、効率的なHMB摂取の仕方とその効果がわかるので、ぜひ最後までご一読ください。

HMBとは何か


HMBとは「ベータ-ヒドロキシ-ベータ-メチル酪酸」のこと。必須アミノ酸である「ロイシン」から変換される成分です。ロイシン→KIC→HMBの流れで変化していき、20gのロイシンから1gのHMBに変換されます。

このようにアミノ酸の「ロイシン」から変換されるものの、その量は少ないです。そのためサプリメントで摂取することで、より効果を得られます。

また一時期、ネット上で「HMBはプロテイン以上の効果がある」かのような広告をよく目にしました。ですが、プロテインはたんぱく質であり、筋肉の材料になるもの。一方でHMBは筋肉の合成を促進して分解を抑える成分であり、そもそも用途が違います。

「HMBを飲むだけで筋肉がつく・痩せる」といった広告もありましたが、トレーニングをせずに、HMBを飲むだけで筋肥大することはありません。

筋肥大のためには、たんぱく質を十分に摂る必要があります。なので、まずホエイプロテインなどを摂って、たんぱく質を十分に摂りましょう。

しっかりトレーニングを行いつつ、プロテイン等でたんぱく質を十分に摂る。その上でHMBを摂取すると、より筋肥大効果が高まります。そしてHMBとクレアチンを合わせて飲むと、さらに効果が高まります。

続いてはHMBの効果について解説します。

HMBの効果


HMBの効果は大きく分けて「筋肉の合成を促進する」と「筋肉の分解を抑える」の2つです。どちらもトレーニーには嬉しい効果ですね。一つ一つ、科学的根拠を解説します。

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筋肉の合成を促進する

HMBの1つ目の効果は、筋肉の合成を促進すること。身体には「mTORシグナル伝達経路」という細胞を増殖させる経路があります。この経路が活性化すると、筋肉の合成が活性化するため筋肉が肥大します。

HMBはこの経路を活性化させる効果があるため、筋肉の合成を促進できるのです。

筋肉の分解を抑える

HMBの2つ目の効果は、筋肉の分解を抑えること。以下の2つの働きにより、筋肉の分解を抑制してくれます。

  • 「ユビキチン・プロテアソーム系」を抑制
  • 「ミオスタチン」を抑制

「ユビキチン・プロテアソーム系」を抑制


身体にはたんぱく質を分解して排出する「ユビキチン・プロテアソーム系」というシステムがあります。

筋肉は維持するだけでも、エネルギーを消費します。なので過剰についた筋肉や、使われなくなった筋肉は、生命の維持にはマイナスに働くため、このシステムにより分解されてしまうのです。

HMBはこのシステムの働きを抑制して、筋肉の分解を減らしてくれます。

「ミオスタチン」を抑制


「ミオスタチン」という筋肉を減らしてしまうたんぱく質があります。身体は筋肉や骨や内臓など、様々な組織から構成されていますが、生命維持に関して、筋肉の重要性はあまり高くありません。

たんぱく質を筋肉ではなく他の臓器等に使うため、ミオスタチンは筋肉が増えすぎないように働きます。つまり筋肥大させたい時に、ミオスタチンが邪魔になるのです。

HMBはこのミオスタチンの働きを抑制し、筋肉の分解を防いでくれます。

続いて、HMBの有効な飲み方をご紹介します。

HMBの飲み方


HMBは飲んでから1~2時間ほどで血中濃度がピークに達し、2.5時間ほどで半分になります。*1 筋肉の合成を高めて、分解を抑制するには、血中濃度が高い状態を維持したいところ。

なので、1日数回に分けて飲みましょう。3g以上を飲んでも効果は変わらないと言われているため、おすすめの摂取量は1日3gです。

1回1gほどを朝・昼・晩と3回飲むか、さらに分けたい人は1回600mgを朝・昼・夕・夜・就寝前と5回に分けて飲むとよいでしょう。

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HMB+クレアチンが効果的


HMBはクレアチンと合わせて飲むと効果的です。「HMBのみ摂取」「クレアチンのみ摂取」「HMBとクレアチンを摂取」する3つのグループに分け、3週間の筋力トレーニングを実施して除脂肪体重や使用重量の変化を測定した実験をご紹介します。*2

HMBのみ摂取したグループが0.39kg増加、クレアチンのみ摂取したグループが0.92kg増加、HMB+クレアチンを摂取したグループが1.54kg増加という結果でした。

HMBのみを摂取したグループよりも、HMB+クレアチンを摂取したグループの方が4倍弱も除脂肪体重が伸びています。

また使用重量は、HMBのみ摂取したグループが37.5kg増加、クレアチンのみ摂取したグループが39.1kg増加、HMB+クレアチンを摂取したグループが51.9kg増加しました。

このようにHMBを単体で摂るよりも、HMBとクレアチン合わせて摂取した方が、除脂肪体重も使用重量も早い向上を期待できます。

HMBとクレアチンが一緒に含まれたサプリメントも売られているので、それを選ぶと楽に摂取できるでしょう。

まとめ


HMBは必須アミノ酸であるロイシンから変換される成分ですが、体内で変換される量は少ないので、サプリメントで摂取するのがおすすめです。

主な効果は「mTORシグナル伝達経路」活性化による、筋肉合成の促進。そして、「ユビキチン・プロテアソーム系」と「ミオスタチン」の抑制による、筋肉分解の抑制です。

なので一時期の広告で言われていたように「HMBを飲むだけで筋肉がつく・痩せる」という効果はありません。

HMBは飲んでから1~2時間ほどで血中濃度がピークに達し、2.5時間ほどで半分になります。血中濃度が高い状態を維持するために、1日数回に分けて飲みましょう。

推奨量は1日3g。1回1gを朝・昼・晩と3回に分けて飲むか、1回600mgを朝・昼・夕・夜・就寝前と5回に分けて飲みましょう。

さらに効果を得たい人は、「クレアチン」と合わせて摂りましょう。HMBだけで摂るより、クレアチンと合わせて摂ったほうが、除脂肪体重も使用重量も向上した実験があります。

HMB+クレアチンを上手に活用することで、あなたの筋トレ効果が向上するでしょう。

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<参照文献一覧>

*1 beta-hydroxy-beta-methylbutyrate (HMB) kinetics and the influence of glucose ingestion in humans.
JNutrBiochem.2001Nov;12(11):631639.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12031256/

*2 Creatine and beta-hydroxy-beta-methylbutyrate (HMB) additively increase lean body mass and muscle strength during a weight-training program
Nutrition.2001JulAug;17(78):55866.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11448573/